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強度近視・病的近視

病的近視とは?

  • 現在近視は、日本はもちろん世界的に急増しており、社会問題になっています。特にアジアは近視の有病率が高く、現在では小学生の段階で半数程度が近視になると言われています。
  • 近視は眼軸長(眼の長さ)が伸びることによって生じます。近視が強いと緑内障や網膜剥離などのリスクが上がる事が知られています。
  • 近視の程度が強いものは「強度近視」と言われますが、「強度近視」と「病的近視」は明確な区別なく使用されてきていました。強度近視は単純に近視度数の程度により定義されます(具体的には-6.5D(ジオプター)以上の近視)。強度近視の中でも、眼軸長が伸びるだけでなく、眼球形状が変形したり、網膜に病的な変化をきたしたりするものを病的近視と呼びます。院長は東京医科歯科大学チームで、病的近視の国際的な定義と分類を行う仕事に携わりました(International Photographic Classification and Grading System for Myopic Maculopathy. American Journal of Ophthalmology. 2015)。
A:近視のない目
B:眼軸が伸びた近視の目
C:眼球形状が変形した病的近視の眼
  • 病的近視は一般的な近視の延長線上として起こるものなのか、別のしくみで起こるものなのかはまだ分かっていません。強度近視の方は病的近視でもある事が多いですが、中には網膜等に異常がなく病的近視ではない強度近視の方もいます。
  • 強度近視を含めて、一般の近視は眼鏡やコンタクトレンズを使用すれば視力が出ます。しかし病的近視は、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正しても視力が出なくなるような病気を合併する頻度が高いため、定期的な健診を受ける事が望ましく、合併症によっては早めの治療を行う必要があります。
  • 院長はこれまで強度近視、病的近視の専門施設で診療に携わってきた経験があり、当院は近視合併症の治療並びに管理を得意としています。

病的近視の合併症

近視性網脈絡膜萎縮

  • 病的近視では、眼軸長が伸びることにより、網膜や網膜の下の血管の膜である脈絡膜(みゃくらくまく)が引っ張られて薄くなり、萎縮を起こしてきます。
  • 網脈絡膜萎縮の種類としては、びまん性萎縮と限局性萎縮があります。
  • びまん性萎縮は境界がはっきりしない黄色の領域として見られます。網膜の機能は保たれるため、視力や視野に影響はしません。
  • 限局性萎縮は、境界がはっきりした黄白色調の領域として見られます。網膜の光を感じる細胞(視細胞)が消失してしまっているため、限局性萎縮の部分の視野は見えない暗点となります。
正常眼底
びまん性網脈絡膜萎縮の目立つ近視眼
眼底全体が黄色調になっている
びまん性網脈絡膜萎縮に加えて、
限局性萎縮が見られる眼(矢印)

近視性視神経症(病的近視に伴う緑内障)

  • 病的近視では、眼軸長が伸びることのみならず、眼球の変形が起こります(後部ぶどう腫)。それに伴い、視神経にも引っ張られる力が加わります。その結果、視神経が障害されて視野が欠けていく合併症が近視性視神経症です。
  • 一般的な緑内障とは生じるメカニズムが異なると推察されていますが、緑内障と厳密に区別をすることはできません。
  • 治療は緑内障に準じて眼圧を下げることで、神経に加わる負荷を減らし、視野の欠けが進行していくのをなるべく抑えるようにします。

近視性脈絡膜新生血管

  • 病的近視では、眼球が伸びることにともない、網膜や脈絡膜に牽引(引っ張られる力)が持続的にかかり続けます。この刺激により、網膜の下の血管の膜である脈絡膜に、新生血管という病的な血管が生じることがあります。
  • これが近視性脈絡膜新生血管であり、新生血管から出血を起こしたり、網膜の中や下に滲出(水漏れ)を起こしたりすることで、物が歪んで見えたり、視力が落ちたりします。
  • 抗VEGF薬という薬を目に注射(硝子体注射)する治療を行います。

近視性牽引黄斑症、近視性網膜分離症

  • 病的近視で眼球が伸びたり、眼球後部が後方に突出する変化が生じたりしてくると、網膜もそれに伴って後ろ側に引っ張られます。網膜が眼球の伸びについていけなくなると、網膜が分離したり(近視性網膜分離症)、黄斑部の網膜剥離(牽引性黄斑部網膜剥離)が生じてきます。時として網膜前膜など、網膜を引っ張る病気が併発することもあります。病的近視に伴い網膜が牽引される(引っ張られる)ことで生じる網膜の異常を総称して近視性牽引黄斑症と呼びます。
  • 網膜分離は初期の頃は無症状ですが、程度が強くなったり、発症から長期になってくると、網膜の機能が低下することで、徐々に視力が落ちてきます。また、黄斑部の網膜剥離が生じてくると、黄斑部に孔が開き(黄斑円孔)、更に黄斑円孔網膜剥離という失明につながる病気に進行していく危険性が高まります。
  • 自然に改善することは稀であり、視力低下や高度の網膜分離、黄斑部網膜剥離をきたしてきた場合は、早めの硝子体手術が必要になります。
  • 院長は病的近視の専門施設でこの近視性牽引黄斑症の診療や手術、研究を専門的に行い、発症メカニズムの解明や手術成績などを国内外の学会や論文で発表をしてきた実績(業績8、10)があり、最も得意としている領域の一つです。

手術前は網膜分離(矢印)と、黄斑部の網膜剥離(星)があり、視力が低下している。
硝子体手術により網膜分離、網膜剥離ともに治癒し視力も改善した。

後部ぶどう腫

  • 後部ぶどう腫とは病的近視の特徴ともいえる代表的な病態であり、眼球後部が後方に突出した状態です。
  • 後部ぶどう腫のある病的近視眼では、ぶどう腫のない眼より視力が悪くなる傾向にあることや、近視性牽引黄斑症や脈絡膜新生血管などの合併症が起こりやすいことも報告されています。
  • 院長はこれまで後部ぶどう腫の研究に携わってきており、光干渉断層計を用いたぶどう腫の診断(業績4、6、9)や、ラットを用いた動物実験での眼軸延長抑制法の開発(業績7)を報告して参りました。
  • 後部ぶどう腫は病的近視合併症の諸悪の根源とも言えるような病態ですが、残念ながらぶどう腫を戻す治療法はなく、予防法も確立されていません。しかし、ぶどう腫に伴って生じる合併症に対しては治療が可能です。後部ぶどう腫を指摘された方は、合併症の早期発見ができるよう、定期的な健診を受ける事が望まれます。
正常な眼の3D-MRI画像
後部ぶどう腫のある眼の3D-MRI画像:
眼球後部が後方に突出しているのが分かる