2026年7月に執刀した手術は、①白内障手術 82件、②白内障硝子体同時手術 17件、③硝子体単独手術 7件、④硝子体手術+眼内レンズ強膜内固定術 1件(眼内レンズ脱臼)でした。
さて、今年も記録的な暑さが続いています。ニュースでは毎日のように「熱中症警戒アラート」が発表され、熱中症による救急搬送も増えています。熱中症といえば、「命に関わる病気」というイメージがありますが、最近Environmental Researchという学術誌に、「熱中症は将来の白内障のリスクを高める可能性がある」という興味深い日本での研究が発表されました(Ambient heat exposure as a risk factor for cataracts: Evidence from a nationwide claims-based study in Japan. Environmental Research. 2026)。
白内障は加齢によって水晶体が濁る病気で、
- 年齢
- 紫外線
- 糖尿病
- 喫煙
などが代表的な危険因子として知られています。一方、「熱中症になると白内障になりやすい」という明確な証拠はこれまでほとんどありませんでした。暑い地域では白内障が多いことは以前から知られていましたが、それが紫外線の影響なのか、高温そのものの影響なのかははっきりしていなかったのです。
日本全国の大規模データで検証
今回の研究では、日本全国の健康保険データベースを用いて、熱中症(Heat-related illness)の既往がある人は、その後白内障を発症しやすいかを調べました。解析の結果、
- 熱中症の既往がある人では、白内障全体の発症リスクが約2倍(HR 1.96)
- 核白内障では約2.2倍(HR 2.16)
という結果になりました。
若い人でも影響がみられた
注目されたのは、30〜39歳という比較的若い世代でも関連が認められたことです。通常、この年代では白内障はそれほど多くありません。そのため研究者らは、「強い熱ストレスによって、水晶体の老化が通常より早く進む可能性がある」と考察しています。
なぜ熱中症で白内障が起こるのでしょう?
今回の研究では原因そのものは証明されていませんが、いくつかのメカニズムが考えられています。
- 高体温によって水晶体のタンパク質がダメージを受ける
- 酸化ストレスが増える
- 脱水や循環障害によって水晶体の代謝が低下する
これらは加齢による白内障の変化とも共通しており、「熱」が水晶体の老化を早める可能性があります。
ただし「熱中症になると必ず白内障になる」わけではありません
今回の研究は非常に大規模で信頼性の高い疫学研究ですが、熱中症が直接白内障を引き起こすことを証明した研究ではありません。あくまで「熱中症の既往がある人では白内障が多かった」という関連を示した研究です。今後はさらに、熱ストレスがどのように水晶体へ影響するのかを調べる研究が期待されています。
目を守るためにも熱中症予防を
熱中症予防は、命を守るだけでなく、将来の目の健康にもつながる可能性があります。暑い日は
- こまめな水分・塩分補給
- 無理をせずエアコンを活用する
- 屋外では帽子や日傘を使う
- 炎天下での長時間の作業を避ける
といった基本的な対策を心がけましょう。また、白内障は初期には自覚症状が少ない病気です。「最近見えにくくなった」「夜間の運転がまぶしい」「視力が落ちた」と感じる場合は、早めに眼科を受診することをおすすめします。