8月14日~8月27日に執刀した手術は、①白内障手術 19件、②白内障硝子体同時手術 5件、③翼状片手術 1件、④緑内障手術(線維柱帯切除術) 1件でした。線維柱帯切除術は点眼治療やレーザー治療などの非侵襲的治療を行っても眼圧が下降しない際に行う手術治療で、強力な眼圧下降が得られる治療です。一方で、眼に対する負担は大きく、術後の管理も複雑なため、手術のハードルが高い面もあります。今回手術を行った方は以前に既に線維柱帯切除術を行われていましたが、濾過経路が癒着により潰れてしまってきたため眼圧が再上昇してきており手術を行うこととなりました。複数回の手術を要することは稀ではありませんが、今回の手術で眼圧が下降してくれればと期待しています。

さて、表題のクラレオンビビティという6月より使用可能になった多焦点眼内レンズですが、使用感について報告したいと思います。クラレオンビビティは「波面制御型焦点深度拡張」という技術が用いられており、単焦点レンズほどではないもののハロやグレアといった異常光視現象が軽減されており、夜間の運転もストレスなく行えます。

焦点距離としては、下図の通り-2D(50cm相当)までは少数視力で0.7程度まで確保できており、実用的な距離は概ねカバーできているものの、近方視力がやや弱いという欠点もあります。また現時点では乱視矯正用レンズがありません。

クラレオンビビティを選ぶに当たって、一番悩まれるのは同じアルコン社の3焦点レンズであるクラレオンパンオプティクスだと思われます。パンオプティクスは遠方、60cm、40cmの3箇所に焦点距離のある設計のレンズであり、近方視力に関しても良好に得られる方が多く、近方はビビティより優れていると言われています。一方で異常光視現象はビビティより多いと言われています。またビビティにはない乱視矯正用レンズのラインナップもあります。そのため、ビビティは「自然な見え方の優先度が高い」「そこまで手元の細かい物を見ることはない」「乱視矯正が不要」という患者様に適した多焦点レンズです。近方視の優先度が高い患者様や、乱視矯正が必要な方はパンオプティクスという選択になると思います。

ビビティを使用するにあたり、上記特性と+0.5Dから-0.5Dまでは視力1.0が期待できるという上記曲線を考慮した上で、「優位眼の焦点距離の狙いを0D(無限遠)」「非優位眼の焦点距離の狙いを-0.5D(2m相当)」という僅かに差をつける使用方法を行っています。これにより、優位眼は良好な遠方視力(1.0以上)が得られることが期待でき、また非優位眼も1.0に近い視力を確保しつつ、非優位眼をわずかに近方に寄せることで良好な近方視力が期待できます。このような使用法で、今のところ使用した患者様は両眼とも裸眼視力1.0が得られた上で両眼で見た際の近方視力は十分という良好な結果が得られています。もちろん異常光視現象の訴えもなく、使う側としてはストレスの少ないレンズだという印象です。

左右で度数の差をつけるモノビジョン法は、単焦点レンズ使用時に左右の度数の差をつけることで両眼で見た際に裸眼で見える範囲を広くするために行われてきましたが、多焦点レンズを使用する際にもわずかに差をつける方法は最近よく報告されています。ビビティ以外の多焦点レンズにおいても私も行うことがあり有用性も感じておりますが、ビビティにおいては特に有用性が高いと感じています。