2026年5月に執刀した手術は、①白内障手術 54件、②白内障硝子体同時手術 13件、③硝子体単独手術 5件、④硝子体手術+眼内レンズ強膜内固定 2件(眼内レンズ脱臼 2件)、⑤白内障手術+緑内障手術 1件(線維柱帯切開術)でした。
さて、2026年になり多焦点眼内レンズのラインナップも増え、選択に当たって悩まれることも多いと思われます。そこで本記事では、2026年時点での多焦点レンズの選択に当たっての基準を述べたいと思います。
はじめに
多焦点眼内レンズ選びで最も大切なのは、「どのレンズが優れているか」ではなく、「どの光学設計が自分の生活に合うか」を理解することです。近年は多焦点眼内レンズの種類が増え、
回折型
回折型EDOF
非回折型EDOF
連続焦点型(Full Range EDOF)
など設計思想そのものが異なるレンズが選択できるようになりました。本記事では、2026年時点で国内の選定療養制度の対象となっている主なレンズを例に、光学設計の違いから解説します。
まず理解したい「見え方のトレードオフ」
多焦点眼内レンズ開発では、「近くを見やすくするほど、光学的副作用は増えやすい」という基本原則があります。
患者さんが期待する
・遠方視力
・中間視力
・近方視力
・コントラスト感度
・夜間視機能
をすべて最大化することは困難です。そのため各レンズは「何を優先するか」によって設計されています。
回折型レンズとは? ~光を意図的に分配する技術~
回折型レンズではレンズ表面に微細な回折構造が形成されています。この構造により、1つの光を、
「遠方」「中間」「近方」
など複数の焦点へ振り分けます。その結果、広い距離で裸眼視力を得やすくなります。
●回折型のメリット
・手元まで見やすい
・老眼鏡依存度を減らしやすい
・読書やスマホ閲覧に強い
●回折型のデメリット
・ハロー
・グレア
・コントラスト低下
が発生しやすくなります。これはレンズの欠陥ではなく、光を配分する過程で代償として生じる光学現象です。
・回折型の代表的なレンズ
パンオプティクス/パンオプティクスプロ
ジェメトリック/ジェメトリックプラス
アクリバトリノバプロ
ファインビジョン
EDOFレンズとは?~焦点を増やさず「焦点深度」を広げる~
EDOFはExtended Depth of Focusの略です。回折型が「焦点を複数作る」技術であるのに対し、EDOFは「焦点の幅を伸ばす」技術です。
●EDOFのメリット
・光学的副作用が比較的少ない
・コントラストを維持しやすい
・夜間視機能への影響が少ない
●EDOFのデメリット
・回折型と比較すると近方視力は得にくい
・EDOFの代表レンズ
ビビティ
ピュアシー
個人的な使用感としては、手元視力はビビティ>ピュアシー、見え方の質はピュアシー≧ビビティ、という印象があります。
多焦点レンズ選びに当たっての「5つの優先順位」
①「見え方の自然さ」と「眼鏡を減らすこと」どちらが大事ですか?
A 自然さ重視、「多少眼鏡を使ってもよいので違和感を減らしたい」
候補
ビビティ
ピュアシー
B 眼鏡使用をできるだけ減らしたい、「多少の光学的副作用は受け入れる」
候補
パンオプティクス/パンオプティクスプロ
ジェメトリック
ファインビジョン
② 夜間運転はどのくらい重要ですか?
A 高速道路をよく運転する
B たまに運転する
C ほとんど運転しない
Aを選んだ方:夜間の光のにじみやまぶしさへの耐容性が重要です。
候補
ビビティ
ピュアシー
必ずしも「運転できる・できない」ではなく、夜間視機能への影響を比較的小さくしたい場合の選択肢です。
③ 一日の中で一番よく見る距離は?
A スマホ中心(30~40cm) LINE、SNS、電子書籍、動画など
候補
パンオプティクス/パンオプティクスプロ
ジェメトリック
ファインビジョン
B パソコン中心(50~60cm) デスクワーク、在宅勤務、事務作業など
候補
パンオプティクス/パンオプティクスプロ
ジェメトリック
ファインビジョン
ビビティ
C 遠方中心 ゴルフ、登山、ドライブ
候補
ビビティ
ピュアシー
④ 性格的に細かなことが気になりますか?これは意外に重要です。
A 気になるタイプ
車の傷がすぐ気になる
モニターのドット欠けが気になる
小さな違和感を見逃せない
場合、ハロやグレアなどが少ないレンズが推奨です。
候補
ビビティ
ピュアシー
B あまり気にならないタイプ
多少のハローやグレアよりも、「眼鏡なし生活」を優先できる場合
候補
パンオプティクス/パンオプティクスプロ
ジェメトリック
ファインビジョン
まとめ
多焦点眼内レンズ選びで大切なのは、「どのレンズが優れているか」ではなく、「どのレンズが自分の生活に合っているか」です。他の眼疾患の有無を考慮に入れる必要があることは言うまでもありませんが、最終的には角膜形状や瞳孔径などの眼の状態に加えて、性格なども考慮して選択していく必要があります。