9月に執刀した手術は、①白内障手術 56件、②白内障硝子体同時手術 12件、③硝子体単独手術 8件、④硝子体手術+眼内レンズ強膜内固定術 1件(眼内レンズ落下)、⑤緑内障手術 3件(プリザーフロマイクロシャント 2件、線維柱帯切除術 1件)、でした。9月は裂孔原性網膜剥離の緊急手術が2件ありました。
さて、近年映像処理技術やディスプレイ解像度技術、また通信速度の向上は目覚ましく、眼科領域においても新しい技術が導入されてきています。これまで眼科領域では顕微鏡を覗いて手術を行っていましたが、近年普及してきている3D手術支援システム(NGENUITY®)は、顕微鏡を覗くことなくディスプレイを見ることで手術を行うシステムです。
NGENITYでは、3D ビデオHDRカメラで撮影した映像をハイスピードで最適化し、デジタル高解像度3D 4Kモニターと専用の偏光メガネによって、繊細な眼底組織をこれまでになく鮮明で奥行きのある表現が可能となりました。そのため、これまでより精密な操作が可能となり、手術精度の向上が期待できます。また光学顕微鏡と比較して、低光量でありながらも高度な映像処理が可能であり、手術中の網膜に対する光の悪影響(網膜光毒性)を減らすことができます。術中ガイダンス機能も標準搭載されており、乱視矯正レンズにおいてもこれまでより高い精度で位置決めを行うことができます。
また、これまで術者は顕微鏡を覗いて手術を行っていましたが、NGENITYでは顕微鏡を覗く必要がなくなるため、術者は不自然な姿勢で顕微鏡を覗きこむことから解放され、自由に身体を動かすことができ、より自由度の高い操作が可能となります。また、医師以外のスタッフも同じ映像を共有することができるため、円滑な運営とスタッフの教育にも寄与します。
このように、医師やスタッフのみならず患者様にとってもメリットの大きいシステムであり、当院でも2024年9月より同システムを導入・運用しております。使用感としては、非常に楽な姿勢で手術が可能であるため長時間の手術も苦にならないことと、極めて精細な画像であるため、細かい操作における手術精度の向上を実感しています。NGEUNITYはまだ一部大学病院等でのみ使用されており、導入している施設はごく少数で、メーカーによると、杉並区では当院が初導入とのことでした。今後も運用を更に円滑にすることで、より質の高い手術を行なえるようにしていきたいと思います。