7月31日-8月13日に執刀した手術は、①白内障手術 24件、②白内障手術+緑内障手術 1件、③硝子体単独手術 1件、④白内障硝子体同時手術 3件、でした。

今回は久しぶりに、手術前診察で原因裂孔不明の裂孔原性網膜剥離の手術がありました。裂孔原性網膜剥離は多くの場合眼底検査で網膜剥離の原因となった網膜裂孔の特定が可能です。しかし、裂孔が極めて小さかったり、瞳孔が小さいなどのため眼底観察が十分にできなかったりすると、術前診察では原因裂孔の特定ができないことがあります。今回は下方に広がる網膜剥離でしたが、硝子体中のフレア(タンパク成分)も多くて透見が悪かったこともあり、手術前の診察では原因裂孔の特定ができない中で手術となりました。 下方の裂孔を原因とする裂孔原性網膜剥離は、ガスなどでタンポナーデを行った際に、日常でよく取る起坐位(座った姿勢)や立位でガスが裂孔に当たらないため、一般的に治りづらいと言われています。私の知人の杏林アイセンターの水野先生達がまとめた論文でも、初回手術で治癒しなかった有意な要因の一つが下方裂孔であったことが報告されており、特に下方の萎縮円孔が弁状裂孔と比較して有意に初回治癒率が低かったとされています。そのため、下方の萎縮円孔でないといいな・・・と考えながら手術を行いました。

手術を開始すると、診察時は下方の網膜のみの剥離に見えていましたが、仰向けになった状態では下方中心ではあるものの、黄斑部も剥離し上方にかけて網膜剥離が広がっていました。硝子体切除を行いつつ念入りに眼底を観察すると、上方の剥離網膜の領域に極めて小さな弁状裂孔があり、原因となった網膜裂孔を特定できました。

小さい裂孔だったため、凝固処理を行った上で孔を広げて、原因裂孔から粘調な網膜下液を抜きつつ眼内を空気に置き換え、レーザーで網膜裂孔周囲を焼き固めた後に膨張性ガス(SF6ガス)でタンポナーデを行って終了となりました。

今回は幸い初回手術で治る可能性が高い上方裂孔が原因でしたが、下方裂孔の網膜剥離は難治性のことも多く、初回復位率を上げるため強膜バックリンクを併用したり、高比重物質であるパーフルオロカーボンの短期留置をしたり等の工夫をしていく必要があると考えます。