3/11ー3/31に執刀した手術は、①白内障手術 37件、②白内障硝子体同時手術 8件、③硝子体単独手術 4件、④硝子体手術+眼内レンズ強膜内固定術 2件、⑤白内障手術+緑内障手術(流出路再建術) 1件でした。
表記のファリシマブについてですが、2022年より滲出型加齢黄斑変性(nAMD)に対して本邦でも使用ができるようになりました。ファリシマブは、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害することで、多くの網膜疾患に関与する2つの疾患経路を阻害するよう設計されています。2024年2月に、nAMDを対象としたファリシマブ6mgとアフリベルセプト2mgによる2年間の治療成績を比較した第三相臨床試験(TENAYA試験、LUCERNE試験)の結果が、アメリカの一流眼科雑誌であるOphthalmolgyに掲載されました(TENAYA and LUCERNE: 2-Year Results from the Phase 3 nAMD Trials of Faricimab with Treat-and-Extend Dosing in Year 2. Ophthalmology 2024)。
この試験では、50歳以上の未治療nAMDを対象に、ランダム化二重盲検比較試験という最も信頼性の高いデザインで、世界271施設において臨床試験が行われました。1326人の参加者のうち1113人が2年間の試験を完遂し、そのうち555人がファリシマブ6mg群で、558人がアフリベルセプト2mg群でした。ファリシマブ群は導入治療として4回投与を行った後、病状に応じて最長16週間隔まで投与間隔を延長し、アフリベルセプト群では導入治療として3回投与を行った後、8週間隔で継続投与が行われました。結果、ファリシマブ6mg(最長16週間隔投与)群、アフリベルセプト2mg(8週間画投与)群ともに治療前と比較して2年時点で視力は有意に改善し、両群間で有意差は見られませんでした。また中心窩下網膜厚も両群ともに改善し、両群間で有意差は見られませんでした。また、ファリシマブ群の78%で12週以上の投与間隔を達成できました。合併症に関しては両群間で差は見られませんでした。
糖尿病黄斑浮腫(DME)においてもファリシマブ6mgはアフリベルセプト2mgと比較して投与回数を減らしつつ同等の治療成績が得られていましたが、nAMDにおいてもほぼ同様の結果が得られれたことになります。今後nAMD治療においても投与回数が少なくて済むファリシマブが主役となっていくものと思われますが、アフリベルセプトも8mgの高用量製剤が使用できる見通しであり、安全性も2mgと同等と言われていることから、アフリベルセプトも更に治療成績の改善や注射回数が減らせる可能性が期待できます。nAMDはDMEと同様に長期に渡って治療が必要なことが多く、また治療不応例も稀ではないことから、治療の選択肢が広がることが期待されます。