1/5-1/21に執刀した手術は、①白内障手術 19件、②白内障硝子体同時手術 5件、③硝子体単独手術 2件、④硝子体手術+眼内レンズ強膜内固定術1件(眼内レンズ落下)、でした。本年の診療開始日である1/5には裂孔原性網膜剥離の患者様が来院されたため、初日から緊急で白内障硝子体同時手術を行いました。

さて先日、20代の女性の患者様が右眼の中心部の視野の欠けているところがあるという主訴で受診されました。矯正視力は(1.2)と低下はしておらず、眼底検査でははっきりとした異常はありませんでしたが、光干渉断層計(OCT)を行ったところ、網膜外層の外顆粒層に高反射領域が見られました(黄色矢印)。

OCT所見から、Acute Macular Neuroretinopathy (AMN)という稀な疾患を疑い、詳しく問診をしたところ低用量ピルを内服されているとのことでした。中心部の視野を詳細に評価するプログラムでの視野検査も行ったところ、訴えを裏付けるような視野障害が見られ、AMNと診断しました。

AMNは1975年に初めて報告された稀な疾患で、若い女性に発症することが多く、一時的もしくは永続的な視機能障害をきたします。多くは片眼性であり、はっきりした原因は分かっていませんが、OCT所見から網膜深層の毛細血管の閉塞が原因と推察されています。危険因子としては、低血圧、発熱性疾患(COVID19含む)、また本症例でも見られたピル内服などが挙げられています。残念ながら現状では治療法は特にないため経過観察を行うしかありません。AMNは比較的稀な疾患と言われていますが、OCTの異常所見も日常診療ではあまり見かけることがないため、診断に至らず見逃されているケースも多くあると思われます。検査では視力良好なことも多く、また眼底やOCTの異常所見も軽微なためともすると異常なしと判断してしまう恐れがあり、(本疾患に限らずですが)見づらさの訴えが強い場合には注意して画像を見ていく必要あります。