2026年3月に執刀した手術は、①白内障手術 81件、②白内障硝子体同時手術 20件、③硝子体単独手術 17件、でした。3月は裂孔原性網膜剥離の緊急手術を5件行いました。

さて私事ですが、3月22日にハーフマラソンを走ってきました。無事完走でき、目標タイムに近い結果を出せました。ラップタイムは、
5km 25:51
10km 51:32(5-10km 25:29)
15km 1:16:23(10-15km 24:39)
20km 1:40:39(15-20km 24:04)
ゴール 1:45:50
でした。総合タイムでは決して速いとは言えませんでしたが、後半にかけてペースダウンすることなく、徐々にペースアップしていけたことは大きな収穫でした。

さて、緑内障は運動により進行予防効果があるのではないかと言われていますが、では日常生活の中でできること、特に有酸素運動は緑内障にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、医学的エビデンスをもとに解説します。


有酸素運動は眼圧を下げる

緑内障において最も重要な因子は眼圧(IOP)です。この眼圧に対して、有酸素運動は比較的明確な効果があることが知られています。

例えば、有酸素運動を継続的に行った研究では、平均で約20%の眼圧低下(約4〜5 mmHg)が認められたと報告されています。さらに、運動を中止すると数週間で眼圧が元に戻ることも示されており、継続の重要性が示唆されています。(Exercise training reduces intraocular pressure among subjects suspected of having glaucoma. Arch Ophthalmol. 1991

また、ジョギングなどの運動後には、緑内障患者・健常者いずれにおいても眼圧が低下することが確認されています。(Aerobic exercise and intraocular pressure in normotensive and glaucoma patients. BMC Ophthalmol. 2009


なぜ運動で眼圧が下がるのか?

近年の研究では、単なる一時的な変化ではなく、眼の構造レベルでの変化も示唆されています。

有酸素運動により、房水(眼内の水分)の排出経路であるシュレム管が拡張し、流出が促進される可能性が報告されています。(Aerobic exercise reduces intraocular pressure and expands Schlemm’s canal dimensions in healthy and primary open-angle glaucoma eyes. Indian J Ophthalmol. 2021

このことから、運動は単なる「一時的な眼圧低下」ではなく、流出路機能の改善に寄与している可能性があります。


緑内障の進行を抑える効果はあるのか?

では、最も重要な「進行抑制効果」はどうでしょうか。この点については、現時点では有効性は示唆されているものの、決定的なエビデンスはまだ十分ではありません。最近のレビューでは、有酸素運動は眼圧を低下させることに加え、緑内障の進行抑制に寄与する可能性があると報告されています。一方で、長期的な進行抑制効果については研究ごとに結果が一致していないとされています。(The Effect of Exercise on Intraocular Pressure and Glaucoma. Journal of Glaucoma. 2024


注意すべき運動もある

すべての運動が緑内障に良いわけではありません。特に以下のような運動は、一時的に眼圧を上昇させる可能性があります。

  • 重量挙げなどの強い筋トレ(いきみを伴う動作)
  • ヨガの逆立ちなど頭が下になる姿勢
  • 息を止めて力む動作(バルサルバ法)

運動内容によっては逆効果となる可能性もあるため、注意が必要です。


実際に推奨される運動とは

現時点のエビデンスからは、以下のような運動が推奨されます。

  • ウォーキング
  • 軽いジョギング
  • 自転車運動

強度としては、「軽く息が上がる程度の中等度運動」が目安です。頻度は数回程度が現実的でしょう。


まとめ

有酸素運動と緑内障の関係について、現時点での結論は以下の通りです。

  • 有酸素運動は眼圧を確実に低下させる
  • 継続することで補助的治療として有効
  • ただし、進行抑制効果はまだ確定していない
  • 運動の種類によっては逆効果となる場合もある

従って、緑内障治療において、有酸素運動「治療の代わり」ではなく「治療を支える生活習慣」として位置づけるのが適切と考えられます。