2026年1月から2月に執刀した手術は、①白内障手術 148件、②白内障硝子体同時手術 23件、③硝子体単独手術 17件、でした。1月から2月にかけては、裂孔原性網膜剥離の緊急手術を7件行いました。

さて、緑内障のある患者さんが白内障手術を受けられる際に、白内障手術と同時に緑内障治療を行うことがあります。白内障手術との同時手術で現在よく行われている方法は、シュレム管経由(主経路)からの流出を促進することで眼圧を下降させる流出路再建術系の手術が多く、その中でも、

  • iStent(アイステント)
  • 線維柱帯切開術(ab interno trabeculotomy)

の2つが多く行われます。では、この両術式ではどれくらい差があるのでしょうか。

iStentとは

https://www.researchgate.net/publication/335357248/figure/fig1/AS%3A795075890122763%401566572272875/Stent-O-and-iStent-inject-O-trabecular-micro-bypass-stents-with-relative-dimensions.png

Reserch Gateより引用

iStentは、シュレム管の手前の線維柱帯に小さな金属製ステントを挿入し、房水の流れを改善することで眼圧を下降させる術式です。

  • 侵襲が小さい
  • 出血が少なめ
  • 保険適応の治療としては、白内障手術と同時に施行のみ認可(2026年3月現在)

という特徴があります。一方で、インプラントを体内に留置する手術であり、まれに位置ずれや脱落といったデバイス特有の問題が起こる可能性があります。

線維柱帯切開術とは

https://www.researchgate.net/publication/321926746/figure/fig1/AS%3A11431281256592158%401719547292912/Intraoperative-findings-of-microhook-ab-interno-trabeculotomy.jpg
https://www.researchgate.net/publication/321926746/figure/fig3/AS%3A11431281256555784%401719547293511/There-types-of-microhooks-and-schematic-drawings-of-their-use.jpg
Reserch Gateより引用

線維柱帯切開術は、シュレム管手前にある線維柱帯を直接切開することで、流出口を広げることで眼圧を下げる手術です。

  • デバイスを残さない
  • 広い範囲を開放できる
  • 白内障手術と同時に行われることが多いが、単独手術としても施行可能

という特徴があります。一方で術後に一時的な前房出血が起こることはあり、それに伴って一過性の高眼圧が生じることがありますが、多くは自然に吸収されます。

効果はどちらが優れているのか?

現在の研究では、大きな優劣はついていません。

まとめると、

✔ どちらも眼圧を約25〜35%程度低下させるが、両者ほぼ同等~線維柱帯切開術がやや眼圧下降効果が大きい。
✔ 点眼薬を減らせる可能性がある。
✔ 前房出血は線維柱帯切開術の方が多い。

というのが現在の主流の見解になっています。

当院が線維柱帯切開術を主に行っている理由

① 術者の熟練度、デバイス利用の有無

手術の術式に当たっては、エビデンスが最重視されることは言うまでもありませんが、術者ごとの術式に対する熟練度も非常に重要です。文献的な結果は同等であっても、同一術者においては、術式に対する熟練度の差により、結果に差が出ることは多くあります。当院では、これまで線維柱帯切開術を多数行ってきており、iStentより術式に対する経験が豊富であることから、線維柱帯切開術を選択しています。また、iStentはデバイスを使用するため、デバイス脱落や、デバイス閉塞の懸念があることも理由の一つです。

② 医療経済合理性

iStentは医療用デバイスを使用する手術です。一方で、線維柱帯切開術はデバイスを使用しません。そのため保険点数は、「白内障手術+線維柱帯切開術」と「白内障手術+iStent」では差があり、線維柱帯切開術の方が医療費はやや安価で済みます。

これは、患者さんの自己負担が抑えられ、また社会全体の医療費を抑制できるという意味で、医療資源の効率的な使用につながります。効果がほぼ同等であるならば、よりシンプルで医療経済的にも合理的な方法を選ぶことには意義があると考えています。